前回、シェンムーのことについて書いたら、「殴ってみろ」のところもうちょっと情報が欲しいとのことなので説明します。たしかにその部分だけ抜き取ってしまうとインパクトはないかも知れません。話の前後の流れを知っていないとピンと来ないかも。



ゲームクリエイター列伝Amazon:ゲームクリエイター烈伝 (1) 少年マガジンコミックス/平沢 たかゆき (著)


1990年 SEGA本社にて

AM2研といえばアフターバーナー、アウトランなど、当時のゲーム産業のシェア30%以上を握っていたSEGA躍進の原動力となった開発集団。その中で鈴木裕氏(あとは裕と記す)はリーダーとして活躍していた。

バーチャ01



バーチャ02ある日、ワイヤーフレーム(人間を線や点で表現するもの)で遊んでいた裕さんは、生き物のような動きをするのを見て、新しいゲームに活用できる事を思いついた。つまり格闘ゲームに応用できると。今まで2D格闘ゲームのストII(ストリートファイター2)が市場を独占していて、3Dポリゴンの格闘ゲームなんて考える人はいなかったのだ。



そこで裕さんは会社の上司たちを説得して、1年の期間でゲームを作ることを許可してもらう。しかし当時、立体的な物体を動かすのには膨大な計算量が必要で、超高速なプログラムがいるのだった。



たくさんのスタッフが頑張ってもなかなかうまく動かずに難航を極めた。何日も家に帰れない。疲労度がたまっていくスタッフ達。そんなときに裕さんは先に家に帰ってしまう。スタッフの間で起こる不信感。しかし次の日、裕さんが持ってきたプログラムは、完璧にポリゴンを動かすものだったのだ。



四苦八苦している間にスピーディーに動かすプログラムを一人で完成しまったことに驚くスタッフ。何週間もかかるものなのに。



バーチャ03ひとりの社員がつぶやく「ポップアップだ!」

裕さんはプログラムなどの技術的な問題をかかえると とことん考えつづけるんだ。すると…夜中にフッと夢を見ることがあるらしいんだ



その夢には…



プログラムに対しての完璧な答えが出ているんだよ!




な、なんだって!?

さらにだめ押し「オレ達はもう何度も裕さんの夢で救われてきたんだぜ!」



すげぇ。睡眠学習よりも凄い。プログラマーだけでなくWebデザイナーやネットワークエンジニアだったりすると、何かのときにかなり役に立ちそうな能力です。



そうして開発は順調に進み、完成間際になるのだけど…



裕「これじゃ ダメだな!! やり直してくれ…」「ダメだ」

何度もダメ出し。裕さんが何を考えているのかわからないスタッフ。当然、抗議すると



バーチャ04さわやかな笑顔で、裕「なぁ お前ケンカしたことあるか?」急に何を言い出すのかわからないスタッフ。ぽかーんとしてると


バーチャ05いままでにこやかな笑顔だった裕さんは、デスノートを持ったキラみたいに表情が変わる。温厚な性格だった仮面が剥ぎ取られる瞬間だ。



今からオレを殴ってみろ!!



みんな唖然としている中、「早くッ!!」殴れと催促する裕さん。


バーチャ06そこで一人のスタッフが及び腰でパンチをいれる。さすが裕さん、軽やかな身のこなしでパンチをよける。



裕「違う……!」重い一発が



当たったら、たぶん死んでた。



そして呆然とするスタッフ達に、コンピューターに向かうのはやめて、全員パンチやキックの練習をしろと命令する。次の日からAM2研は格闘部となり、殴り合いの日々が続く。当然けが人が続出。ついにひとりのスタッフが悟る。

オレらの作っていたゲームは本気で殴ってなかったんですね!!


裕「やっとわかってくれたか」微笑み。ゲームの中に実戦の動きを導入するという当時では画期的なことを考えていたのだ。

裕「この角度で当たったら痛いという感覚を身につけて欲しかったんだ」



そして技のリアリティーをつかんだAM2研はバーチャ開発にさらに製作にはげんで、リアリティーを持った動きを完成させる。



その後は人々を熱中させ、ゲーム誌だけでなくSPAやAERA、HotDogExpressなど一般誌の話題にもなるような大ブームとなる。バーチャファイター現象を起こすわけですよ。ちびっこが言いました「なんかさ…画面から痛さが伝わってくる!!」



ええ話だ。日本のいまのゲームにかけているのはこれですな。たとえばアメリカのGTAグランド・セフト・オート)なんか過激なソフトですが、向こうではめちゃめちゃ売れてる。たぶんアメリカの開発者の中には、過去に何度も事件起こしてブタ箱入りになったひとや、スラム街をひとり夜中歩いていろいろな体験をしたり、スタッフ同士が開発室でバットを持って殴り合ったに違いありません。ゲーム雑誌コンティニューとか読むと、まったくそうには見えないけど、たぶん裏では…。 



あとX−BOX2のためにヒゲを初めとした有名クリエーターをゲイツは集めているけど、裕さんにも声をかけないのかなぁ。



補足)連載後、やっぱり話題となり。当時のネット上のゲームサイト、掲示板では、開発者らしき書き込みが。。。「裕さんプログラム書けないよ。」えー! 最近では「殴ってみろ」はマガジン編集部の創作だった。ポップアップだけは真実なんだとかいろいろ。なんにしろ真相は闇の中ですけど。



そんな苦労のすえに日本ではバーチャーはともかく、ナムコもこのゲームをパクいや参考にして鉄拳ができたと。バーチャ4も人気だし、現在のゲーセンで稼働率ナンバー1と思われる鉄拳5も稼働中なわけですよ。ゲームショーでバーチャ2見たときも感動したし、このコミック読んだときも感動しましたw 鈴木裕さんの伝説はいつまでも心の中で生き続けるのだ。



ならシェンムーがなぜ売れなかったのか? 

「俺にだって…わからないことくらい…ある…」(キバヤシ談



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